関西地域を中心に電力、さらに最近はガスの販売も行っている関西電力。インスタグラムには色鮮やかな関西地域の風景や夜景の投稿が並びます。
一見、インスタグラムとは無縁と思われる電力会社が、どうしてインスタグラムを運用し、投稿するのでしょう?関西電力のインスタグラム活用法をレポートします。
目次
目次
- 1.アカウント運営について
- 2. 電力会社と風景写真
- 3.試行錯誤を重ねた投稿手法
- 4.今後について
- 5.まとめ
1.アカウント運営について
アカウントの全体像と、インスタグラム運用の目的についてご紹介します。
1-1.企業紹介・アカウント紹介
関西電力株式会社は関西地域を中心に電気事業やガス事業等を手がける企業です。
今回は関西電力広報室ソーシャルコミュニケーショングループの丸さん、高橋さんにお話を伺いました!
1-2.インスタグラム運用の目的
――さっそくですが、関西電力のインスタグラム運用の目的を教えていただけますか?
関西電力さん:多くのみなさんが電力会社と聞いて、持たれるイメージや印象ってどういうものでしょうか。
「安定供給に努めている」「親しみがある」といったものから、「融通がきかなさそう」「原子力発電をやっている会社」といったものまで、いろいろあろうかと思います。
もちろんいろいろあっていいのですが、その根本には「電気は毎日使っているけど、電力会社との直接的・間接的な接点がほとんどない」ということがあると思うんですよね。
電気をつくり、送り、届ける。そのために発電所で働く人、鉄塔や電柱に昇る人、電力やガスの自由化の中で営業をする人など、当社にもいろいろな仕事をしている者がいますが、日々しっかり働くことと、それをお客さまにわかってもらうこととは全く異なることなんだ、ということを痛感していました。そうしたなか、特にInstagramは他のSNSとは違う特徴があるもの、関西電力がどういう会社なのかを多くの方々にわかっていただけるツールの1つとして活用できるのではないかと思った、それがきっかけです。
――インスタグラムを活用することで目的は達成されていると思われますか?
関西電力さん:ある程度は(笑)。ただ、私どもは単純にいいね数などで効果を測ることはしていないです。電気・ガスという商品、そして私どもが提供させていただいているサービスは、なかなか目に見えませんので、いわゆる普通の商品を扱う企業とは情報発信すべき内容も少し違ってくるのかなと思っています。スターバックスさんやハーゲンダッツさんなどのように、インスタグラムを見てすぐに商品を買おうとはなりませんので。
私たちの主な目的は、インスタグラムを通じて、関西電力との接点を持っていただくことで、少しでも当社に対する受け止め方を変えていただくことだと思っています。そのためには、見ていただいた方に、「ステキな写真!」という、発見をしていただくことが大切だと思っています。
2.電力会社と風景写真
関西電力のインスタグラムアカウントには、関西地域の春夏秋冬に応じた風景写真や、華やかな夜景写真が並びます。
一見、電力とは関係がないように見えますが、そのような投稿する理由とは何なのか、お伺いしました。
2-1.なぜ風景写真を投稿するのか
――風景写真を投稿する理由を教えてください!
関西電力さん:ここに至るまでにも紆余曲折がありまして(笑)。関西電力のアカウントを見てくださる方が、ストレスなく受け取れる写真とはどういうものだろう?と、色々と考えてきました。動物、人物、イラストなどをはじめ、様々なジャンルにチャレンジし、お客さまにとって受け入れてもらいやすい投稿内容を試行錯誤してきました。
何がウケるかを求めてさまよい続けた時期もありましたが、ある時、「ちょっと待てよ。それは違うんじゃないか」と思ったんです。
――それはどういうことでしょうか?
たくさんの人に見てほしい、でも、そこを追いかけても意味がないんじゃないか、と。
色々と試していく中で、自分たちはどのようにインスタグラムをやっていきたいのか、まず自分たちのアカウントの世界観を決め、ブレずにやっていくことが大切なんじゃないか、と。関西電力のアカウントをのぞけば、「こういう感じなのか」というメッセージがあって、それを裏付ける「魅せる写真」を展開することで自分たちなりの世界観を作り上げていこうよ、ということになったのです。
私たちは、そもそも関西に根ざした企業なので、関西地域に対するこだわりも大切にしたい。また、電力会社ですので、灯り(あたたかみ)も伝えていきたい、と考えています。
2-2.素材へのこだわり
――写真素材はどのように撮影されているのですか?
関西電力さん:アイデアを形にするのはすごく大変です。だから関西電力のアカウントの世界観について理解し、共感してくださっている複数のカメラマンさんと契約させていただいています。その中でも本当に納得できるものだけを掲載しています。
――全てのカメラマンが写真を掲載できるわけではないのですか
関西電力さん:そうです。週に1回投稿するとすれば、写真の投稿枠は1か月に4つですよね。例えば、カメラマンさんが8人いたら、写真が採用されるのは2分の1の確率になります。また、必ずしも公平に採用されるというわけでもありません。カメラマンの方からすれば、撮ったものが必ず投稿されるとは限らないのです。
だからこそカメラマンさんとは密にコミュニケーションをとり、関西電力の想いをしっかりと伝えさせていただいています。なので実際のところは、そこはカメラマンの方のご理解とご協力があった上で、一緒にアカウントを作っているという感じです。
――インスタグラムの投稿の中で、いいねが多いのはどのような写真ですか?
関西電力さん:これまでの結果から考えますと、キーワードは「季節感」と「タイムリー性」の2つです。現在、風景や夜景の写真がメインですので、春は桜、秋は紅葉の写真を載せるなど、季節感は大事に展開しています。
また、実際のイベントに合わせた投稿は、イベントに参加される方にとって、「こんなにきれいに見える場所もあるんだ」という期待感にもつながっていることから人気ですね。例えば、花火大会の直前に、昨年の花火大会の写真を載せたりすると、様々な反応をいただけます。
――素敵な写真を見て、行ってみたいと思う人も多そうです。観光のガイドブックのような役割もしているのですね。
関西電力さん:そうなんです。とはいえ、実は当初、そうしたことはあまり私どもとしては想定していませでした(笑)関西の会社として、地域のイベントの盛り上がりの1つのきっかけになるのであれば、とても嬉しいですね。
3.試行錯誤を重ねた投稿手法
――写真の投稿手法について、工夫していることはありますか?
関西電力さん:それこそ、失敗の連続です(笑)。以前、1つの写真を分割して投稿する手法が流行っていたので、私たちもやってみたことがあります。ところが、全然ウケない。なぜなんだろうと議論していたところ、例えば、9分割の投稿全体を一つの写真として見るときれいなのですが、お客さま目線で考えると、同じような写真が9個も連続でタイムラインに流れてくる。これってすごくご迷惑をおかけしているんじゃないか(笑)、と思い至り、やめることにしました。
――フォロワーさんの気持ちになって考えているのですね。
関西電力さん:ほかにも、「Instagram=若い女性」ならば女性をメインにした写真はどうかと、以前、女性を起用した写真の撮影もやってみましたが、これもダメでした。社内の女性にもいろいろと話を聞いてみたら、「そこに自分を重ねられない」、と。私どもが掲載する写真は、いわゆるよく撮れている写真、ということではないのですね。その写真からどういうイメージが生まれるのか、それがあっていい写真といえるんだな、と痛感しました。
具体的に言いますと、紅葉の時期ですが、同世代の女性をメインにした写真よりも、掌に紅葉を載せた写真のほうがいいねがたくさんつくんですよね。
大切なのは、皆さんが写真を見たときに、その世界に入り込む自分をイメージできるかどうかだと思います。
――なるほど。ハッシュタグや投稿時間で意識していることがあれば教えてください。
関西電力さん:ハッシュタグについても試行錯誤していますが、現在は10万~20万件投稿があるものを中心に、投稿数が多すぎず少なすぎないハッシュタグを採用し、ハッシュタグを通じて当社のアカウントを知っていただくことも狙っています。
投稿時間は主に夕方~夜です。夜景の写真を投稿することが多いことから、実際の投稿時間にも注意を払っています。例えば、朝焼けの写真であれば、午前中に投稿することもあります。
4.今後について
――今後の目標について教えてください。
関西電力さん:目標という大それたものはないのですが、まず大切な事は、何より、我々もインスタグラムを楽しんで運営していくということです。そういうのってご覧いただいている方にものすごく伝わると思うんですね。例えば、女優の石田ゆり子さんのインスタグラムアカウントの投稿は、一緒に過ごされている猫や犬の投稿がメインなのですが、フォロワーが猫や犬の日々の様子や成長のストーリーを楽しめ、自然と引き込まれるアカウントです。何より猫や犬への愛情があふれています。そこに私たちも癒されます。
ここまで目標を高くはできないですが(笑)、関西電力としても、ご覧になった方に少しでも何かが伝えられるような投稿をしていきたいです。また、まだ関西電力のインスタグラムをご存知ない方もたくさんいらっしゃいますので、お客さまに参加していただける企画を作っていくことも含め、キャンペーンなども展開していければと思っています。少しプレッシャーもありますが、一人でも多くの方に、関西電力のインスタグラムを楽しんでいただければと思っています。
――本日はありがとうございました!
5.まとめ
関西電力さんは、一見インスタグラムとは無縁に思われる電力会社ですが、そのイメージとは異なり、お客さまとのコミュニケーションをとる手段の一つとしてアカウントを開設し、多くのフォロワーを獲得されていました。
いろいろな変遷はあったようですが、風景写真を通して関西を少しでも元気にしたいという姿勢は、たくさんの人に受け入れられていると感じました。
フォロワーの立場になってコンテンツを選び、何より自分たちが楽しみながら発信し続けることがファンの獲得につながるのではないでしょうか。