皆さんは、インスタグラムを雑誌のように利用する「インスタグラムマガジン」というものをご存知でしょうか?
cocorone(@cocoronedays)は、インスタグラムマガジンとして1年以上運用を続け、世界観を確立したのちに、このアカウントを基にWebメディアをローンチしました。
今回はcocorone編集長のとみこ(@tomiko_tokyo)さんに、cocorone(@cocoronedays)のインスタグラム運用、またそれをWebメディアに繋げた戦略についてお話を伺いました!
目次
目次
- 1.@cocoronedaysの世界観
- 2.アカウント運用の体制
- 3.エンゲージメントを高める手書き風メッセージ
- 4.自然音だけのIGTVで世界観を表現
- 5.インスタグラムマガジンからWebメディアに繋げた戦略
- 6.今後の展望
- 7.まとめ
1.@cocoronedaysの世界観
ーーー最初に、cocorone(@cocoronedays)さんの伝えたい世界観について教えてください。
とみこさん:はい、cocoroneは「あなたの毎日に小さな“素敵”を添えて」というコンセプトを掲げています。
「丁寧な暮らし」って、皆さん何となくハードルが高いと感じられたり、なかなか楽しみ方が分からないと思われたりしていますが、暮らしはちょっとした工夫で楽しくなるものだと思っています。
ハードルが高いと感じてなかなか踏み出せない人たちに向けて、「暮らしってちょっとした工夫だけで楽しめるんだよ」とお伝えするのがcocoroneの一番の目的であり、目指している姿です。
ーーー僕もcocoroneさんの投稿を見ていると「自分にも出来そうだ」と感じて、真似したくなります。
とみこさん:そうですね。先日投稿した山菜料理の投稿も、見た目はちょっと難しそうなんですけど、本当に簡単なんですよ。
日常をちょっぴり楽しく過ごせるようなアイデアを載せているので、ぜひ取り入れてもらえたらなと思っています。
ーーーそういった世界観に統一感を持たせるために、何か気をつけている点はありますか。
とみこさん:最初の頃は「明日の朝が楽しみになる情報を届ける」というコンセプトだけで運用していたんです。でも、ランニングが好きな人もいれば朝からコーヒー飲む人もいて、「明日の朝が楽しみになる」の定義って人によって様々ですよね。
そこでよりタイムラインの世界観を統一させるために、“おうちの時間”や“暮らし”に重きを置いて発信していきたいということになり、「テーブルから半径5m」というコンセプトを新たに追加したんです。それ以降は、世界観を統一しやすくなりました。
2.アカウント運用の体制
ーーーcocoroneさんのアカウント運用についてお聞きします。まず、アカウントの運用はどのような体制で行っているのでしょうか。
とみこさん:現在、運営メンバーは約20人です。体制は作業ベースで分かれていて、工程としては5つに分かれています。
cocorone(@cocoronedays)はインスタグラマーさんと共同でコンテンツを作っているので、まずインスタグラマーさんから写真を集めるというフローがあります。
その後に写真に添える文字を決め、キャプションのテキストを書き、その後写真にデザイン入れをします。最後にハッシュタグをつけるメンバーもいて、ハッシュタグをつけて完成です。
ーーーハッシュタグ専門のメンバーもいらっしゃるんですね。
投稿素材はインスタグラマーの方から集めているということでしたが、その方々が「cocoroneルームメイト」なんですね。
とみこさん:はい。cocoroneは、「世界観を作ること、そしてその世界観に人を集めること」を大切に運営しています。私たちはそんな世界観に共感するインスタグラマー、「cocorone ルームメイト」(以下ルームメイト)とコンテンツを共同制作しています。
ただフォロワーが多いだけではなく、テーブルコーデ、料理、植物など、cocoroneらしい世界観をつくる上では欠かせない、暮らしに特化したインスタグラマーのコミュニティです。
ーーーどのようにして100名以上のルームメイトを募ったのですか。
とみこさん:最初の頃はcocorone運営メンバーの知り合いのインスタグラマーの方々にお願いしていて、そこから徐々に広げていきました。最近は、写真が素敵な人やcocoroneらしいお花や料理を投稿している方々を選んでお声がけをするという形です。
規定のフォロワー数なども特に決めていなくて、「その方の世界観がcocoroneの世界観と合うかどうか」という基準で選んでいます。
ーーーインスタグラマーの人にとっても、cocoroneさんから声がかかったらやっぱり嬉しいですよね。
とみこさん:最初の頃は結構苦戦していたんですけど、Webメディアが出来て、インスタグラムアカウントのフォロワーが1万人を超えた頃から、快くご協力いただけることが多くなりました。
ーーー投稿素材は、全てルームメイトの方々から集めたものなんですか。
とみこさん:ほとんどはルームメイトの方々の写真なんですけど、月に4投稿くらいは自分たちで作っています。
写真が見つからなくて、本当に出したいコンテンツを諦めてしまうこともあるので、それに備えて自分たちで撮影・投稿する機会も設けています。
それ以外は、ルームメイトの方々の写真をこちらが選ぶ形ですね。またcocorone(@cocoronedays)の他に、ルームメイト管理用のインスタグラムアカウントをもう一つ作っています。
管理用のアカウントでは、ルームメイトのみをフォローしているので、ルームメイトの投稿はそこで全て確認できるようになっています。
ーーー運用体制もよく考えられているんですね。どのくらいのペースで投稿されているのでしょうか。
とみこさん:最初は毎日1投稿していたんですけれど、Webメディアができてからはその更新頻度に合わせて2日に1本のペースで投稿しています。
ただ、cocoorneとしては「おばあちゃんの知恵」を現代風にアップデートしたいという気持ちがあり、「立春」や「夏至」などの二十四節気は必ず取り入れようということになっています。なので二十四節気がある日は2日連続で投稿したりもしていますね。
3.エンゲージメントを高める手書き風メッセージ
ーーーcocoroneさんの投稿は、写真の中に描かれた手書き風のメッセージが素敵ですよね。どうしてテキストではなく、写真の中にメッセージを入れようと思ったんですか。
とみこさん:それを始めたのは本当に一年前くらいで、ちょうどABテストのような形で、写真の中に文字が入っている投稿と入っていない投稿とを繰り返して試してみたんです。
そこで文字を入れた投稿の方がユーザーの反応が目に見えて良いということが分かったので、投稿する写真全てにデザインを入れるという方向での運用を徹底し始めました。
またインスタグラムのアルゴリズムで、ユーザーの投稿での滞在時間が長ければ長いほど検索結果上位に表示されやすくなったことも大きいですね。
ーーー最初から写真の中にメッセージを入れようと決めていたわけではないのですね。
写真にメッセージを入れる時に、フォントであったり文字のサイズであったり、何か気をつけていらっしゃることはありますか。
とみこさん:あまり文字が大きくなりすぎないようには気をつけていますね。大きい方が読みやすくはあるんですけど、cocoroneの世界観として「飾りすぎないナチュラルな女性像」をペルソナにおいているので、文字は程よいサイズに統一しています。
文字もデザインガイドでルール化して、デザイナーはそれに則ってデザインをしています。
4.自然音だけのIGTVで世界観を表現
ーーーcocoroneさんはIGTVを投稿していますが、IGTV利用の目的や、ストーリーズ機能との使い分けについて教えていただけますか。
とみこさん:イメージムービーやプロモーションムービーのような、cocoroneのブランディングを目的として作っています。
ストーリーズは投稿可能時間も短く、またフォロワーが1万人いなかった頃はストーリーズからリンクも飛ばせなかったので、「ストーリーズは難しいね」という話をしていたんです。
それに対してIGTVはフォロワー数に関わらずリンクを貼れますし、ある程度長尺の動画も上げることができます。そこで、これなら!と思い使い始めました。
ーーーIGTVを投稿する際に、これまでの世界観を崩さないために気をつけていることはありますか。
とみこさん:「テーブルから半径5m」というのがcocoroneのコンセプトなので、動画をテーブルのカットから始めるなど、コンセプトを体現するような構成を練りました。
またcocoroneでは、日本の伝統工芸品なども紹介できたらと思っていて、新しい日本茶ブランド『美濃加茂茶舗』や、美濃焼『SAKUZAN』のうつわなども細部に散りばめながら動画を作成しました。
ーーーこだわりがすごいですね。
とみこさん:それと、音はあえて入れませんでした。cocoroneの世界観には「飾りすぎない等身大の世界」という一面もあるなと思って、なるべくお茶を入れる音や食器を置く音といった、自然音だけで作りこんだというのもこだわりの一つです。
ーーーそうなんですね。確かにcocoroneさんのIGTVでは、BGM等がない分自然音が強調されていて、お皿を置く「コトッ」という音が良い響きだなと思っていました。
5.インスタグラムマガジンからWebメディアへ繋げた戦略
ーーーcocoroneは2019年1月23日にWebメディアをローンチされたということですが、最初からWebメディアで始めるのではなく「インスタグラムマガジン」という形式でスタートした理由はあるのでしょうか。
とみこさん:最初は、インスタグラムマガジンが今後ブームになりそうだから、うちもやってみようというところから始めました。Webメディアを立ち上げるのに比べて、インスタグラムは運用の工数が少なく済むんですよね。
「最初は少ない工数でテストマーケティングをしながら、コンテンツを作り出していけるよね」ということもあり、インスタマガジンという形式を選んだという経緯もあります。
ーーーインスタグラムでテストマーケティングを重ねることが出来たからこそ、Webメディアをローンチしてからは迷わず活動できているという部分もあるのでしょうか。
とみこさん:そうですね、今Webメディアで取り扱っている記事は、インスタグラムで保存数やいいね数が多かったものにカテゴリを絞っていたりもします。
1年間インスタグラムを運用して、いわゆる投稿の「勝ちパターン」が見えてからWebメディアを立ち上げることが出来ました。
またインスタグラム上に、すでに私たちの世界観を好きと言ってくれるファンがいるというのは大きいと思います。
Webメディアを始めたのは Instagram で勝ちパターンが見えてきたからというのもあるんですけど、今後挑戦したいと考えているECや自社での商品開発そのためのベータ版としての1面もあります。
インスタグラムのルームメイトを巻き込んで商品開発をしていくという話も出ていて、2019年はルームメイトとの関係を深めていきたいと思っています。
ーーートライ&エラーをスピーディーに回しやすく、反応をリアルタイムで追いやすいSNSの特徴を活かしたということですね。
Webメディアの記事についてですが、過去にインスタグラムで投稿した物をWeb記事としてリライトしているのでしょうか。
とみこさん:Webメディアのローンチ時点では、インスタグラムで保存数が良かったりWebメディアのカテゴリーに当てはまるような投稿をリライトした記事が中心になっています。
2月以降はWebメディアのために記事を作って、それをインスタグラムにも展開するという形になったので、今はWebに軸足を移しています。
ーーーこれからは、Webメディアとインスタグラムアカウントをどのように使い分けられるのでしょうか。
とみこさん:Webメディアの方は、SEOであったりとかTwitterからの流入であったりとか、新規の顧客を新しく増やしていければいいなと思っています。
インスタグラムの方は、既存のフォロワーさんやルームメイトとのコミュニケーションを深めるツールとして使っていけたらいいなと思っていますね。ルームメイトの皆さんはインスタグラムを拠点に活動している方が多いので。
6.今後の展望
ーーー今後の施策や展望について教えてください。
とみこさん:今考えているのは、インスタLIVEを取り入れることです。ルームメイトの自宅に遊びに行かせてもらって、こだわりのインテリア等を紹介していけたらなという話をしています。
それと、先日「cocorone Gift」というサービスをリリースしました。「cocorone Gift」は、企業様から提供いただいた商品をcocoroneらしい世界観でラッピングを施し、約100名のルームメイトにプレゼントするサービスです。暮らしに感度の高いユーザーの間で、商品の投稿を効果的に生み出すことができます。
あくまでもギフトという形なので投稿は任意になってしまいますが、熱量の高い投稿が集められるというところを切り口にしています。これも元々はお歳暮の考え方から来ていて、以前ある石鹸のブランドをプレゼントした際には皆さん喜んでくださって、投稿してくださる方も結構いらっしゃいました。
私たちとしても撮影のマニュアルや「cocoroneカード」というものをプレゼントに同封して、投稿を促すような工夫をしています。新生活やお歳暮等のタイミングで年に4回cocorone Giftをお送りするので、参加企業を募るなどしてマネタイズにつなげられたらと思っています。
ーーーここにも「おばあちゃんの知恵」が現代風にアップデートされているんですね。
cocorone Giftですが、企業側としてはルームメイトがどれくらいPRしてくれるかは気になるところだと思います。そういった線引きはどのようにされているんですか。
とみこさん:企業さんがどういう数値が気になるのか、どこをクリアすれば参加してもらえるのかをトライ&エラーしているところです。
どれだけ投稿率を上げられるのかというところは、私たちが頑張るところかなと思っています。あとは、商品を実際に使ってみた感想などもヒアリングできるような体制を整えています。
ーーーそこでもやはり、戦略的にトライ&エラーを繰り返されているんですね。
7.まとめ
インスタグラムマガジンcocoroneさんは、戦略的にトライ&エラーを回しながら、Webメディアのローンチに繋げたことがよく分かりました。
またフォロワーを増やすことだけを目的にするのではなく、クリエイターとのコミュニケーションやECなど、様々な施策と絡めてアカウントを運用されていました。
インスタグラムの運用自体を目的にするのではなく、「インスタグラムというSNSを使って何をしたいのか」を考えることの大切さを再確認しました。
今後もcocorone(@cocoronedays)さんの取り組みに目が離せません!