「リアル」を伝えるためにインフルエンサーとコラボする米国下着ビジネスの今

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米国で最大のシェア数を誇り、セクシーなイメージとファンタジーを売りにしているVictoria’s Secretが2月28日に北米1,143店舗中53店舗を今年閉店することを親会社L Brandsが発表しました。安定した売れ行き上昇を示している下着業界でVictoria’s Secretの50店舗以上の閉店は、下着業界のトレンドが移りかわっていることを顕著に表しています。

下着業界トレンドのひとつは、下着の宣伝にもインフルエンサーを使っているという点です。私も日本にある某下着ブランドのアメリカ法人でインターンシップをした経験があり、積極的にインフルエンサーとコラボレーションをしている点に驚きを隠せませんでした。

今後なぜ米国の下着業界に注目すべきなのか、日本の下着ビジネスとの違い、トレンドや米国ではどのように下着を宣伝・マーケティングしているのか、米国の下着業界のイマを全てご紹介します。

目次

1.米国の下着業界とは?

まず、ここ数年の下着業界のトレンドをご紹介する前に服の売れ行きが低迷している中なぜ下着は安定した売り上げ傾向を示しているのかを
知っておくとトレンドの背景がもっと見えやすくなってくるので、米国の下着業界のバックグラウンドについて少々触れたいと思います。

1-1.下着の寿命

下着は服と比べて寿命が短いといわれています。
やはり下着はデリケートな生地で肌に一番密着して擦れるということもあり、サイズやフィット感に変化はなくても6-8ヶ月で買い換えるように推奨されています。
また下着の洗濯・ケアで比較してみると、米国の洗濯機は日本と比べるとかなり強く、洗濯物を干す文化もないのでドラム式乾燥機を使う人も多く、すぐに形が崩れてしまうのです。
寿命は短く、必需品であるため、多少高くても売れるということが米国下着ビジネスの強みでもあります。

1-2.米国の下着ブランドは下着以外に何を売っている?

日本も米国もブランドによって差はあるものの、米国の下着ブランドで、下着、シェイプウェア、ルームウェア等以外で売られている商品として一般的なものが、水着とスポーツブラも含めたスポーツウェアです。Victoria’s Secretの場合は水着、スポーツウェアに加え、香水やボディークリームやリップグロスといったコスメも販売しています。
この点は日本と大きく違い、米国の下着業界にはさまざまなニーズに同時に応えられる体勢が整っています。

1-3.ファッション性

日本でも「見せブラ」という言葉があるように、ファッションの一部として人に見せることを意識したデザインの下着もかなり増えてきて、下着業界が勢いを増している背景のうちの一つでもあります。

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Layers for (spring) days. 📷: @something_vogue

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2.米国下着業界のトレンドとは?

米国の下着業界のバックグラウンドを押さえたところで、Victoria’s Secretが乗り遅れてしまった米国の下着業界のトレンドをご紹介しながら、Victoria’s Secretが2019年50店舗以上閉店するまでに至った原因を突き詰めたいと思います。

2-1.オンラインベースのビジネス

今回のニュースで注目していただきたいのは、Victoria’s Secretの売り上げが下方方向にある50「店舗」を閉店するということです。実は、昨年四半期のVictoria’s Secretのオンラインの売り上げは8パーセント上がっています。

下着はプライベートなものなので家で安心して試着・購入したいというお客様のリアルな声に応えて、ここ数年米国では店舗を一切開店せずオンラインショップのみで運営しているブランドが多くなりました。
オンラインショッピングでの下着の購入を円滑にする為に返品をしやすいようにしたり、お客様のサイズやフィット感に合った商品をお届けできるように、クイズ形式で胸の形や気になる点など応えて、お客様一人一人に合ったおすすめ商品から選ぶことができるようにしたり、ブランドも様々な工夫をしています。
また、下着の寿命が短いという点を利用して、月額制で毎月下着が家の玄関まで届くというサービスを売りにしているブランドもあります。

ただ、エキスパートたちによると下着に関してはオンラインのみで運営していくのは限界があり、やはり実際に店舗でプロの方に測定してもらうのが一番ということもあってか、ここ最近オンラインのみで運営していたブランドも徐々に店舗を開店しつつあります。膨大な店舗数を誇るVictoria’s Secretはかなり有利ですね。

2-2.「リアル・現実」にフォーカスしたイメージと商品作り

下着業界に限らず従来のテレビ・映画・広告などのメディアで起用される女優やモデルはだいたい決まって白人で、体型も「完璧」な人たちでした。

しかし、近年では米国のメディア業界のダイバーシティー(多様性)の受け入れ体勢に拍車がかかり、「実際の」米国は人種も体型も多種多様な人々で成り立った国だという考えも下着業界に浸透し、この考えをビジネスチャンスとして大成功し話題性を呼んでいるブランドも多くあります。

例えば、American Eagleの下着ブランドであるAerieは、2014年からモデルの写真もフォトショップでリタッチしないありのままの姿を公開し、「完璧」な体型をした非現実的なモデルではなく、ロールモデル(お手本)としてなりたいと思えるような実際に身近にいる人をモデルとして起用する#AerieRealキャンペーンを始め、今でも話題となっています。

Aerieはダイバーシティーの取り入れも人種や体型だけに止まらず、昨年から#AerieRealキャンペーンモデルに身体障がい者や慢性疾患者をフィーチャーし、大盛況を呼びました。

他にも歌手リアーナが立ち上げた下着ブランドSavage X Fentyも、リアーナらしいセクシーでパンチの効いたデザインが特徴なだけでなく、「自分のありのままの体を受け入れ愛する」という意のボディーポジティビティ要素を多く取り入れてるのも特徴のブランドです。

従来の下着のヌードカラーといえばベージュですが、リアーナは「いろんな肌の色をした人がいるのにヌードカラーが一色しかないのはおかしい!」と感じた自身の体験に基づき、ヌードカラーの色展開は「全て」あるのだとか。

商品のサイズ展開も最大ショーツは3X,ブラは44DDまであり、昨年の9月に行われたSavage X Fentyのニューヨークファッションショーでは、様々な体型のモデルを起用しただけでなく妊婦のモデルもランウェイを歩き大いに盛り上がりました。下着業界では今後もダイバーシティー・キャンペーンやマーケティングが導入されていくのではないでしょうか。

このように事例を見ていきますと、Victoria’s Secretはモデルにいろんな人種のモデルを取り入れるようにはなったものの、ダイバーシティーの取り入れがさらに進化している中でまだ非現実的に体型の完璧なモデル・イメージを起用することから、考えが古いと消費者の眼に映るのかもしれません。

2-3.セクシー重視から着心地重視へ

3つ目のトレンドは2つ目のトレンド「現実」にフォーカスしたイメージと商品作りのボディーポジティビティ要素を受け、派生したトレンドでもあります。2017年あたりから大々的に起こった#MeToo運動もきっかけに、本来女性用下着は女性のものであるはずなのに、現状は男性をターゲットにしたセクシーなイメージだということに焦点もあたりました。今後は下着も自分の為に選ぼうということで、セクシーであることよりも着心地の良さを重視するように消費者たちの好みも移行してきているのです。

エシカルかつスタイリッシュなデザインの洋服を販売していることで大人気のブランドEverlaneが昨年2018年3月に100%コットンのフリル無し、レース無し、パッド無し、リボン無しと「無駄」なものが一切ない質と着心地だけにフォーカスした下着ラインを出し、エシカルなブランドということもありさらに大反響を呼びました。

2-4.インフルエンサーの力も借りてより身近に!

近年商品やブランドの認知度を上げるのにインスタグラマーをはじめインフルエンサーは欠かせない存在になってきました。米国の下着業界でも、その「リアル・現実」をよりきちんと伝えるためにインフルエンサーの存在が最適と考えられます。

なぜなら、インフルエンサーたちはモデルのような遠い存在ではないからです。
インフルエンサーたちは、消費者たちに一番近い存在でありながら、その人のライフスタイルをフォローしたい、真似したいという影響力もあるから宣伝効果も高くなります。

もちろん下着はプライベートなものなので、インフルエンサーによっても抵抗の有無はありますが、商品のフラットレイで商品のデザイン性を表現したり、ファッションの一部として見せブラでスタイリングの仕方を伝えたり、堂々と下着を身につけボディーポジティビティを広めたりと表現の仕方は様々です。

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by Molly T.さん(@fashionveggie)がシェアした投稿 –

3.まとめ

つい先日、3月14日にVictoria’s Secretのモデルの新メンバーとしてBarbara Palvinさんが正式に任命されました。身長172cm体重55kgと今までのVictoria’s Secretのモデルと比較すると健康的だと称賛されている一方で、まだまだ非現実的な体型でプラスサイズモデルとは程遠いと批判の声も多く上っています。
米国の下着業界がこれだけ大盛り上がりのなか、インフルエンサーによるPRも増えてきました。さらにどんなトレンドがうまれるのか、このトレンドをもとにどんなキャンペーンが今後紹介されるのか楽しみですね。

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