こんにちは。NY情報局のMELIAです!
先日、世界4大ファッションウィークの一つ、ニューヨークファッションウィークで日本人メイクアップアーティストKento Utsuboが手がけるアパレルブランド「kentina」初のファッションショーが行われました。
メイクアップアーティストとしてアパレルブランドを立ち上げるのは世界初の挑戦。
「メイクアップアーティストにとって新しいキャリアアップのカタチ」、「ニューヨークでショーをする上でのマーケティング戦略」についてkentinaのデザイナーのKento Utsuboさんにインタビューをしました。
今回、kentinaがファッションショーを開催するにあたり、テテマーチNY情報局がマーケティング面でサポートしました。
目次
メイクアップアーティストがアパレルブランドを立ち上げるという挑戦
(Photo by @naoyasu_mera_photography)
「kentina」のデザイナーであるKento Utsubo氏。彼は、2013年に渡米して以来、ニューヨークでフリーのメイクアップアーティストとしてVOGUE magazineやV magazineなどの世界的有名雑誌を手がけました。そして今年、メイクアップアーティストとしては業界で初めての試みとなる、アパレルブランドを立ち上げました。
現在もメイクアップアーティストとして活動しつつ、同時に「kentina」のデザイナーとしてメイクアップアーティストの新しいキャリア形成に挑戦しています。
そして2019年9月、ニューヨークファッションウィークの時期に、「kentina」初のファッションショーを開催し、来場者は200名を超える大成功を収めました。
岡山デニムを使用した「kentina」というブランド
(Photo by @naoyasu_mera_photography)
「kentina」はメイクアップアーティストであるKento Utsuboが「全ての人がありのままの自分を表現することを受け入れる多様性のある街」ニューヨークでの8年間のアーティスト活動で培った世界観をデザインしたブランドです。素材は岡山デニムを使用し、ラフに自由に自分を表現できる”普通”のスタイルをデザインします。
ニューヨークでブランドを立ち上げる挑戦の背景
(Photo by @hayato_photo_diary)
—-ニューヨークで初めてのショーを開催することは大変だったと思いますがショーをしようと思ったきっかけを教えてください。
Kento:
スポンサー企業様から「kentina」へ出資いただいたお金の使い道を考えた時に、まずは無名ブランドでもインパクトのあることをしたいと考えました。
また「kentina」というブランドは、様々な”挑戦”の場にしたいと考える中で、世界的に有名なニューヨークファッションウィークで思い切って単独ファッションショーを開催し、そこに初期投資をすることがブランド立ち上げの成功の道だと思い、決断しました。
ニューヨークコレクションって純粋にすごいじゃないですか。
お金をかけるならここしかないなと思いました。
スポンサー企業の方も、僕の挑戦を応援してくれて、「どんな化学反応が起きるか実験的に始めてみよう!」と前向きに後押ししていただいたことも大きいです。
「型にはまらない」からこそニューヨークは挑戦しやすい
—-岡山デニムは日本でもかなり有名ですが、日本ではなくあえてニューヨークで始めたのはなぜですか?
Kento:
ニューヨークの、「型にはまらない自由な文化」でこそ、新しい挑戦が受け入れられると考えたからです。
僕はメイクアップアーティストとして活動する上で常に「型にはまらない」スタンスを意識しています。
そのスタンスは服作りにおいても大事にしたいと考え、挑戦に寛容なニューヨークでスタートをしたいと思いました。
実は、ニューヨークに岡山デニムを使うブランドはあります。しかし、ニューヨークで岡山デニムをオートクチュールとして扱うブランドがなかったので、それを世界の中心であるニューヨークで試してみたいと思いました。
(Photo by @kohei1002)
—-とはいえ、新しいブランドを日本ではなくニューヨークでスタートすることって勇気がいると思うのですが、どうですか?
Kento:
難しいことを考えすぎて動き出せない人が多いんだと思います。
でも、ニューヨークに住んだことがある人ならわかると思いますが、ニューヨークは一歩を踏み出してみると意外とうまくいく環境です。
重要なのはチャンスを選べるかどうか、だと考えます。ニューヨークはチャンスがたくさん転がっている環境ですが、どれにでも乗っかってしまっては本当に大事なことが抜けてしまいがちです。
—-思い切ってニューヨークでスタートしたからこその反響はありましたか?
Kento:
ニューヨーク内での反響が大きいです。毎日、インスタグラムなどでモデルや雑誌関係者からコラボレーションの相談の連絡が届いています。
またスタイリストからリースの相談もきているので、今後「kentina」のコレクションが様々な雑誌で起用されるのが楽しみです。
実は、日本では「型破り」な僕のメイクは時折批判されることもありました。
それを踏まえると、今回の「kentina」も色々な面で「ルール無視」の自由な発想でショーを開催した部分があるので、日本でやっていたら賛否両論あったかもしれません。
初のファッションショーをニューヨークでやったからこそ受け入れられている印象が強いです。
(Photo by @bodycook)
ニューヨークでショーを成功させるためのマーケティング施策
—-立ち上げたばかりのブランドのため、まずは認知度を上げる上でどのような工夫をされましたか?
Kento:
InstagramとFacebookはかなり使いました。この2つのSNSをメインにストリートスナップをポストし、口コミを広げることを意識しました。
特に、kentinaのインスタグラムのストーリーズで、フォトグラファーやモデルを募集し、ほぼ毎週ストリートスナップ撮影を行いました。
インスタグラムで「更新性」と「話題性」を維持することを意識した企画です。
新規ブランドのため写真素材が少ないので、ストリートスナップを行うことで写真素材を増やすことができ、また、協力してくれたフォトグラファーやモデルの方をタグ付けしておくことで、彼ら/彼女らのフォロワーにも「kentina」を知っていただく機会が増えます。
デニムさえあれば、どこでも撮影できるので、僕が不在でもメンバーがニューヨークの街へ繰り出したくさん撮影会をしてくれていたのでインスタグラムは毎日活発でした。
ファッションショーが終わった今でも、スナップ企画は続けています。インスタグラムは継続してフォロワーさんにブランド情報を届けることが大事なので、今後も色々なインフルエンサーを巻き込んでいこうと考えています。
あとは、僕自身のメイクアップアーティストとしてのキャリアとネットワークを活かして、モデルやメイクアップアーティスト、デザイナーなどにDMなどで直接宣伝もしました。とにかく「kentina」を知ってもらえるように頑張りました。
—-他にマーケティング面で気をつけたことはありますか?
Kento:
PRはとても大変でした。
今回、テテマーチのYUKAKOさんにご協力いただきPR・マーケティングをしましたが、結果は200名を超えるゲストの方がショーへご来場いただき、満員御礼となりました。
ニューヨークの、特にファッション業界においてイベントをやる際は、「歩留まりがとても低いこと」に注意しなければいけません。
通常、15%~20%程度しかないのです。
今回は、来場者目標が200名以上だったため、参加表明を1000件以上集めておく必要がありました。PRチームで協力して、招待メールや、SNSでの宣伝、また口コミ活動をした結果、kentinaのショーの来場率は30%でした。
平均値より高く着地した背景は、SNSなどでの口コミ宣伝に注力していたことが大きいと思います。
なぜ、この業界における来場率が低いのかというと、一つはニューヨークファッションウィーク期間中は競争率が高いことが挙げられます。毎日様々な場所で様々な規模のファッションショーが行われており、メディア関係者は毎日複数の招待メールを受け取ります。そんな中で知名度の低いブランドのファッションショーは、スルーされるか、「とりあえず申し込み」しておく場合が多いです。そのため申し込みが増えても実際の来場者数は15%~20%になるのです。
(左からKento Utsubo, テテマーチNY情報局のYUKAKO, メイクアシスタントのJuna)
—-最後に、今後の展開についてお聞かせください。
Kento:
今回のファッションショーが成功したことで、いいスタートが切れたと思います。
業界関係者から一定の注目を集めることができたし、メンバーも集まりました。
今後はセレブリティなどにもアプローチをかけていきもっと話題を生んでいきたいです。
常に「おもしろいことするなー」っと驚かせられるブランドになっていけば嬉しいです。
僕にとっても、関わってくれてる人にとっても「挑戦」できる場所にして行きたいので、また次の挑戦を計画しています。
具体的には来年2月のファッションウィークシーズンに向けてサプライズを企画しているので楽しみにしていてください!
(Photo by @davidgannonphotography)
今回、”kentina”デザイナーのKentoさんにインタビュー、そして実際にショーにも携わってわかったことは、型破りなことをすることで道がひらけたり可能性がニューヨークにはたくさんあるということです。
メイクアップアップアーティストからアパレルブランドのデザイナーになるという珍しい経歴のKentoさんですが、今後もさらに日本人や日本の企業がニューヨークでチャレンジしていけるようになればと感じました。
メイクアップ:Juna Uehara @okigaljuju