目次
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1. 日本政府観光局(JNTO)とは
1-1. 企業紹介
日本政府観光局(JNTO:Japan National Tourism Organization)は外国人旅行者の誘致を行う政府機関で、世界の主要な市場に海外事務所を設置しています。日本へのインバウンド・ツーリズムのプロモーションやマーケティングを50年以上にわたり行っています。
HP:https://www.jnto.go.jp/jpn/
1-2. アカウント紹介
Instagramアカウント:@visitjapanjp
フォロワー数:36.8万人(2020年1月現在)
今回は、Instagramの運用を担当している福本さん(企画総室 デジタルマーケティング室)にお話を伺いました。
2. コミュニケーションを深めるUGCとストーリーズ活用
2-1. Instagramでは旅の経験のシェアを促進
――はじめにInstagramのアカウント開設に踏み切った経緯を教えてください。
全世界に向けて英語で情報発信する@visitjapanjpを開設したのは、2017年の10月です。それ以前はFacebookを中心に情報発信していましたが、Instagramの世界的な流行を鑑み、グローバルアカウントの開設に至りました。
――Facebookは以前から運用されてきたとのことですが、Facebookと比べた役割の違いはありますか?
Instagramは写真で繋がることができるプラットフォームですので、クリエイティブの質にこだわっています。また、UGCを活用し、ユーザーとのコミュニケーションを生むことを重視しています。
InstagramとFacebookの両者は、ともに日本各地への旅行需要を喚起する認知フェーズ、実際に日本に観光中の体験・消費フェーズ、旅行後に体験をシェアする帰国フェーズで有用であると考えています。
その中で、Facebookは、投稿に組み込まれたURLからWEBサイトに誘導し、日本の観光地の知識を深めてもらうツール、Instagramは、ユーザー自身が旅ナカ、旅アトの経験をシェアしながら私たちと接点を増やすツールとして、差異を設けています。
(参考:https://www.jnto.go.jp/eng/download/JNTO_InstagramGuideline_2019.pdf)
2-2. UGCでユーザーに親近感を持ってもらう
――UGCを活用しながらコミュニケーションを生んでいるとお話にありましたが、UGCを活用する目的を詳しく伺えますか?
UGCを活用するメリットとして、ユーザー目線でコンテンツ発信ができることが挙げられます。企業や公的機関の投稿は、インスタグラマーさん等の投稿と比べると、なかなかユーザーと親密さを築きづらいことが課題です。一般ユーザーの方々が作成したコンテンツを活用することで、旅行先を探しているユーザーに対して共感を持っていただくことを目指しています。
また、アカウントとファンとのコミュニケーションが図れることも、もう一つのメリットです。#visitjapanjpをつけて投稿をすることをユーザーに促すことで、写真投稿を集め、私たちのアカウントでご紹介することで投稿者との交流や対話を生んでいます。
(参考:https://www.instagram.com/explore/tags/visitjapanjp/)
2-3. UGCをきっかけに観光資源を発掘
――UGCを活用することで見えてきた効果はありますか?
私たちが認知をしていなかった、日本の観光地の新しい魅力を発掘できています。ハッシュタグを通して様々な観光素材が全国各地から集まり、潜在的な観光資源の発掘や、新しいプロモーション施策に繋がっています。
――実際に観光資源の発掘に繋がった投稿をご紹介いただけますか?
桜や紅葉、また全国のお祭りの写真が多いですね。
例えば、5月の投稿の中でいいね数やコメント数などの反応が非常に良かったもので、観櫻火宴というお祭りがあります。私たちもユーザーの投稿で初めて知ったのですが、侍行列が見られるお祭りで、欧米の方からの反響が大きかったです。
(参考:https://www.instagram.com/p/BxzlOnsnlGE/)
2-4. 縦構図と日本らしさが伝わるコンテンツが鍵
――UGCを選定する際の基準はありますか?
訪日プロモーションが目的なので、海外の方が好むコンテンツが大前提です。
パッと見て「日本らしさ」が伝わることが重要です。フィード上の投稿を流し読みしているSNSユーザーが投稿に反応する時間は、3秒程度と言われていますので、例えば桜や鳥居など初見で日本の魅力が伝わるモチーフを選定することが多いです。
また、Instagramはスマホで見る方が多いので、奥行きのある構図や縦構図はエンゲージメントが高く出る傾向にあります。
2-5. ストーリーズの質問機能やメンション機能を利用したコミュニケーション
――ストーリーズはどのように利用されていますか?
ユーザー参加型の機能を活用してコミュニケーションを深めています。
(参考:https://www.jnto.go.jp/eng/download/JNTO_InstagramGuideline_2019.pdf)
2019年8月はクイズ形式のストーリーズを配信しました。フィード投稿で反応が良かった投稿の中から、「この場所を知っていますか?」と質問機能を利用し回答を募りました。
(9月にストーリーズ投稿した「呼びかけ投稿」の画像)
2019年9月には、日本を旅行したユーザーに対し、「メンション機能を使い、あなたの発見した日本をストーリーズで投稿してください」と写真の公募を行いました。1日限りの呼びかけでしたが、100件以上の投稿が集まり、その中から実際に4点、10月のストーリーズで「アンサー投稿」としてご紹介をしました。
(10月に実施した「アンサー投稿」の画像)
また、ストーリーズは、インプレッションが高く出ますし、ハイパーリンクを貼ることができるので、サイトへの導線としても利用できると思っています。
3. 細やかなガイドラインを設けた運用法
3-1. 海外市場別にアカウントを運用し、ローカライズした情報を発信
――次にアカウントをどのように運用されているか教えてください。
@visitjapanjpは、東京本部にあるデジタルマーケティング室で運営しています。
私はSNS担当として、InstagramをはじめFacebook、YouTube、TripAdvisorのグローバルアカウントを管理しています。実際の投稿作業や画像の選定は事業者様と一緒に行っています。
――他にも海外市場別にアカウントを運用されていますが、こちらの運用体制はどうしているのでしょうか。
現地の海外事務所が運用を担っています。対象市場ごとにニーズや、反応のいい投稿の傾向がありますので、きめ細やかに情報発信をすべく、今回ご紹介いただいているグローバルアカウントとは別に13の市場別Instagramアカウントがあります。
例えば、フランスでは寺社仏閣などの日本の伝統的な写真がユーザーの反応を得やすいです。また、今秋開催されていたラグビーワールドカップの出場国では、会期中に関連投稿を行ってアカウントを盛り上げました。
さらに、アカウントごとにユーザーとコミュニケーションを図る目的で、推奨するハッシュタグを設けています。
3-2. フォロワーに質問を投げかけコメントを促すキャプションづくり
――キャプションに何かこだわりはありますか?
内容を簡潔に、キャッチーにまとめることを意識しています。
長文の場合、続きを読むために「more」をタップする必要がありますので、それを避け、初見で投稿の主旨を伝えるようにしています。
私たちは政府機関ですので、丁寧なキャプションづくりを心掛けている一方で、親近感を持ってもらえるよう、なるべくフレンドリーに対応することも大切にしています。
また、フォロワーに質問を投げかける形でキャプションをつけることもあります。そうやって情報を先出ししすぎないことで、コメント数が伸びやすい傾向にあります。 投稿から最低24時間はコメントやDMの有無を確認していますので、コメント欄の質問に答える形で詳細な情報を伝えています。
3-3. コメント対応のガイドラインを策定
――質問以外のユーザーからのコメントにはどのように対応していますか?
ユーザーへのコメント対応の基本方針を設けており、それに沿った対応をしています。
例えば、「ポジティブなコメントにはいいねを返す」、「返信の際、参考になりそうなJNTOのWEBページをお勧めする」、「ユーザーの意見が分かれ議論になり始めたらいいねやコメントはせず中立的立場をとる」などです。
(参考:https://www.jnto.go.jp/eng/download/JNTO_InstagramGuideline_2019.pdf)
ネガティブなコメントへの対応方針も定めています。日本の政府機関ということもあり、時々ではありますが、日本の外交政策などの影響を受けることもあります。いざという時に混乱を招かないよう、事前に対応方針を策定するに至りました。
3-4. 「ビッグワード」「一定のニーズ」「ニッチ」に分かれるハッシュタグ選定
――ハッシュタグはどのようなものをつけていますか?
投稿のトピックにより訴求したい層が多かれ少なかれ異なりますので、ハッシュタグにも変化をつけています。
具体的には、ビッグワードのタグ、一定のニーズが見込めるタグ、ニッチなタグとそれぞれ狙いをもって設定しています。
ビッグワードのタグでは、#travelinspirationといった旅行全般に興味や関心を持つユーザーへ訴求するものです。 一定のニーズが見込めるタグは、日本に関心を持っている層に向けて使っており、#japanloversなどが例に挙げられます。
(参考:https://www.instagram.com/explore/tags/japanlovers/)
ニッチなタグは、日本固有の観光地など日本にある程度詳しいユーザーに訴求するものです。 これらをバランスよく組み合わせることで検索に対応できるようにしています。
4. さらなる認知拡大に向けて
4-1. ハッシュタグキャンペーンを通しフォロワー増加
――フォロワーは現在36万人を超えていますが、どのように推移したのでしょうか。
アカウント開設当初に開催したキャンペーンをきっかけに、順調にフォロワーが増加しています。
2017年10月にアカウント開設を記念してインスタミートを開催し、30人のインスタグラマーを招待しました。また、2018年1~2月には、Instagram主催の#unknownjapanキャンペーンと連携し、日本の隠れた魅力を世界に発信することを目的としたフォトコンテストを実施しました。このキャンペーンではユーザーにJNTOの公式Instagramアカウントをフォローしていただき、指定のハッシュタグをつけて写真を投稿していただいたのですが、結果的に目標投稿数2,000を大きく上回る、13,000件の投稿が集まりました。そこからアカウントの認知を拡大でき、今では対象市場のMAU(Monthly Active Users:月間アクティブユーザー数)の伸びとも比例して、フォロワー数が上昇しています。
現在は、フォロワー数の対先月比が110%強ほどで順調に推移しています。
――アカウント開設直後のキャンペーンでフォロワー増加に拍車をかけたのですね!他にキャンペーンの実施はありますか?
ダイビングツーリズムの訴求など、小規模なものは何度か開催しています。またJNTOの新しい試みとして、BtoBのハッシュタグキャンペーン「#letsmeetinjapan」を今年度実施しました。国際会議などのビジネスイベントを理由に来日された方に「日本での体験や感動」を「口コミ」として、InstagramなどのSNSで投稿してもらうキャンペーンです。
これを通し日本におけるMICE誘致(Meeting:会議・研修・セミナー、Incentive tour:報奨・招待旅行、Convention またはConference:大会・学会・国際会議、Exhibition:展示会の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一つの形態)を狙っています。
今後は、また外部とコラボレーションをしてユーザー参加型の企画を行いたいと考えています。
4-2. 地域との連携を通し訪日外国人増加を目指す
――今後挑戦してみたいことを教えてください。
ユーザーの投稿から観光資源の発掘ができてきていますので、こういった情報をウェブサイトでも記事化するなど、オウンドメディア間の連携を強化できればと考えています。
また、これまで以上に地域の方とも連携を図りたいと考えています。自治体・DMOが行う訪日プロモーションを支援する目的で、今年9月には各地域のSNS担当者に向けた『Instagram運用ガイドライン』 を発行しました。ガイドラインでは、今回お話ししてきましたようなJNTOの運用ノウハウをご紹介しています。
また、自治体アカウントの投稿で私たちのハッシュタグをつけていただいたものを紹介したりもしていますので、今後そうした取り組みにも力を入れていきたいですね。
(参考:https://www.instagram.com/p/B3MnpgAAatc/?utm_source=ig_embed)
こういった施策を通し、来年のオリンピックはじめ訪日外国人の増加に繋げることが最終的なゴールです!
5. まとめ
2017年秋のInstagramアカウントの開設からすでに35万ものフォロワーを獲得しているJNTO。
Instagramの特徴を生かしたUGCやストーリーズの活用や、細やかなガイドラインの策定など運用の裏には細やかな施策が見られました。Instagramが、コミュニケーションツールとして機能するための綿密な施策は不可欠であると実感しました。
皆さんも参考にしてみてはいかがでしょうか?